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ゼンソクってなに?


ゼンソクは、実はこんな病気だったんです

  • 好酸球による気道の慢性的な炎症
  • 「ゼーゼー・ヒューヒュー音が聞こえる息苦しさ」が特有の症状
  • 日中より夜(就寝時〜明け方)に咳・息苦しさ
  • 大人になってからの発病が60%
  • カゼ、天候・気候の急な変化、運動が3大悪化原因
  • 問診・呼吸機能検査・呼気中一酸化窒素の測定で診断
  • 大人で治る(寛解)のは10〜15%くらい


Q 肺ってどんな仕組みなの?

A 気道(気管+気管支)+肺胞=肺

まずは、咳が出る原因の場所である肺の構造について説明します。

ノドからつながる空気の通り道の気管は一本、途中で左右に別れ、更に上・中・下の気管支に枝分かれして、徐々に狭くなります(丁度、木の枝を逆さまにしたようなイメージです)。
狭くなった気管支の先端には、非常に小さい風船状の肺胞(はいほう:左右合わせてで3〜4億個)が木の枝に実がなっているようにびっしりと付いています。
【息を吸う】
鼻・口⇒気管⇒気管支⇒細い気管支⇒肺胞が膨らむ
【息を吐く】
肺胞が縮む⇒細い気管支⇒気管支⇒気管⇒鼻・口から吐き出す

肺胞では、体に必要な酸素と体から発生した不必要な二酸化炭素の交換が行われています。

この気道と肺胞を併せたものが肺となります。

肺の構造

肺胞の構造とガス交換



Q 気道はどうなっているの?

A 上皮細胞(表面を覆う)と腺細胞(潤いを与える)

気道の内側には、肌で言えばうぶ毛のような線毛(せんもう)が、びっしりと生えています(肉眼では見えないような非常に細い構造です)。

気道の表面は、この繊毛がはえている上皮細胞と、その間には、所々に粘液(涙やツバのような液体)を分泌する細胞(腺細胞)の2種類の細胞で構成されています。

腺細胞から出る粘液は気道に潤いを与えています。
上皮細胞に生えている線毛は、外から入ってきた異物・ばい菌や余分な粘液を喉元にに押し上げるような運動を繰り返しています。

気道の粘膜の構造



Q ゼンソクの人の気道は?

A 炎症を起こして、過敏に反応する

喘息患者さんの気道は、慢性的(症状がなくても)な炎症(えんしょう)が起きてています。

皮膚に例えると、気道の表面を擦りむいた、あるいは肌荒れを起こした様な状態となっています。

炎症を起こしている気道は、
  • ほこり・動物のフケ(アレルギーの原因物質)
  • 冷たい空気
  • タバコの煙
  • 過労・ストレス

色々な刺激に敏感に反応し、咳(せき)・痰(たん)・喘息に特有な症状である胸元で、ゼーゼー、ヒューヒュー(喘鳴:ぜんめい)音がする息切れを感じます。

気道が、色々な刺激に過剰に反応しやすい状態を気道過敏性(きどうかびんせい)と呼びます。

気道の炎症と過敏性が発作を誘発する

Q なぜヒューヒューするの?

A 気道のむくみ・筋肉が縮んで、気道が狭くなるから

気管支喘息の発作時には、以下の2つの変化を起こします。
  • 気道の炎症が強くなる
  • 気道平滑筋が縮む

喘息の発作時には、気道の炎症の悪化により、気道の壁が浮腫(むくむ)、気道の内側に分泌される粘液が増える、更に気道の拡がり具合を調節している周囲の筋肉(平滑筋)が縮みます。

この気道の浮腫、分泌物の増加、気道の平滑筋の収縮の3つの要素により、気道が狭くなります。
気道が狭くなると、空気の流れに乱れが生じ、のど元・胸元でゼーゼー・ヒューヒューする音(喘鳴:ぜんめい)が発生します。

※なお、咳が続けて出ること・痰がのど元に絡む状態を「ゼコゼコする」という表現をされる患者さんが時々お見えになりますが、これは喘鳴ではありません。

Q 喘鳴が無くても喘息なの?

A 気道が60%まで狭くなるとヒューヒュー

喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼーゼーとした音)を伴った息苦しさは、喘息に特徴的な症状です。

ただし、喘鳴は気道が通常の6割まで狭くならないと発生しません。また、主に息を吐く時に発生します。

喘息は夜間に悪化することが多いため、症状の落ち着いた日中は、喘鳴が無いことが殆どです。
患者さん「昨日の夜は、ゼーゼー息苦しかった…喘息ですか?」
医師「今は音はしていないね…苦しい時でないと喘息の診断は難しいんですよねえ」

こんな事にならないために、喘息の診断には詳しい問診・専門的な検査が必要となります。

Q 夜苦しくなるのはなぜ?

A 気道が狭くなる・アレルギー反応が起きやすい

昼間は良いんだけど...夜になると調子悪い」
「昨日の夜もセキをしていたけど大丈夫って(家族に)言われた…


なぜ、喘息は夜になると悪化するのでしょうか?
それには、次の4つの理由があります。

1.交感神経と副交感神経のバランス
活動する昼間は、体に十分な酸素を取り入れるために交感神経(アクセル)が働いて気道は拡がります。一方、夜間は、体を休めるために副交感神経(ブレーキ)が働いて気道は狭くなります。

2.気道の炎症
気道は、昼間に比べて夜になると炎症が強くなって、①気道の表面が腫れる・②分泌物が増える・③気道周囲の筋肉が縮みます。

3.ダニ・ハウスダスト
寝具(ふとん・まくら)に付いているダニ・ほこりを吸って、アレルギー反応が起きます。

4.後鼻漏・鼻閉
鼻水がのどに垂れてくる後鼻漏(こうびろう)、鼻の通りが狭くなって口で呼吸する事によって乾燥した冷たい空気が、のど〜気道を刺激します。

自律神経

気道の炎症

ダニ
(布団・枕)

後鼻漏
鼻閉・口呼吸

Q どうやって診断するの?

A ①問診 ②レントゲン ③肺機能 ④呼気中一酸化窒素

喘息を正確に診断するためには、以下の4項目が重要です。

  • 喘息に特徴的な症状を問診
  • レントゲンで影が写るような病気の除外
  • 息を吐く時に気道が狭くなる(閉塞性障害)かどうか?
  • 気道の炎症はあるか?

【喘息に特徴的な症状を問診】
 喘息は、咳、痰、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)を伴った息苦しさが症状の特徴です。昼間になると症状が軽くなりますが、夜になると再び悪化します。時には、ご自分は寝ていて、ご家族から、寝ている間の咳や喘鳴を指摘されることもあります。一方、カゼの後遺症、結核、肺癌、心不全などでも同じような症状が起きるため、詳しく問診をする事により、病気の鑑別をする必要性があります。

【胸のレントゲン写真】
 喘息では、胸のレントゲン写真に異常は現れません。レントゲンで異常がある場合には、喘息以外の病気が疑われます(なお、「レントゲンで本当に異常がない」と判定するためには、呼吸器・心臓の病気に関する専門的な知識が必要です)。

【呼吸機能検査】
 呼吸機能検査は、①空気を十分に吸い込めるか、②吸い込んだ空気を速く吐き出せるかどうかを測定します。喘息では、息を吐く時に気道が狭くなるため、②の吸い込んだ空気を吐き出す時のスピードが低下します。息を吐く時に気道が狭くなる代表的な病気には、喘息とタバコが原因のCOPD(肺気腫・慢性気管支炎)があります。

【呼気中一酸化窒素】
 喘息は、アレルギー(好酸球)による気道の炎症が常に(発作がない時にも)起きています。気道の表面からは、色々な物質が作られていますが、その1つに一酸化窒素があります。アレルギー(好酸球)による気道の炎症が起きると、気道の表面から作られる一酸化窒素が増えます。吐いた息の中に含まれる一酸化窒素を測定することにより、気道にアレルギー(好酸球)に強く関連した炎症が起きているかどうかを判断します。

問診

レントゲン写真

肺機能検査

呼気中一酸化窒素



Q どんな時に悪くなるの?

A カゼ、気候の変わり目、運動が3大原因

最も喘息発作を起こしやすい原因はカゼです。

カゼをひいてしまった(微熱、のどの痛み、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり等)当日に喘息が悪化する方は2割程度、カゼを引いた2~3日後に喘息が悪化する方が5割以上でした。つまり、カゼを引いた当日より2~3日後の方が喘息発作が起きやすいことになります。
かぜ以外では、天候・気候の変化(気圧・寒暖差)、運動(特に冬場の寒い、乾燥した屋外)、アレルギーの原因(ホコリ・動物のフケ・カビ)が身近に増えた時、煙(タバコ、線香、花火)・臭い(香水・柔軟剤)、過労・ストレス、笑う・泣く等が発作の原因となります。
また、食品(ソバ・ピーナッツなど)、酒、薬(痛み止め・解熱剤)も喘息を悪化させる原因となる方が見えます。
なお、女性の喘息患者さんの2~3割の方に生理の前後に喘息が悪化する傾向がありました。



Q 子供の病気じゃないの?

A 6割は大人になってから

喘息は子どもの病気と思われている方が多いのではないでしょうか?
「あなたの喘息が初めて起きたのはいつですか?」と質問した結果、
  • ~19歳:4割
  • 成人(20~44歳):3割
  • 中高年(45歳以上):3割
成人と中高年を併せると6割、つまり、半数以上が、大人になってから初めて喘息を発症していました。
特に最近は、中高年になって初めて喘息発作を自覚される方が増加しています。
「この頃、いつものカゼが長引くようになった..歳のせいかなあ?」

いいえ、その長引くカゼは喘息かもしれません!

喘息が発症した年齢調査




Q 喘息は「遺伝」しますか?

A アレルギーを起こしやすい体質が遺伝

喘息は遺伝するのではないか?と心配されている方が多いのではないでしょうか。

最近の研究の結果では、喘息が遺伝するのではなく、アレルギーを起こしやすい体質が遺伝すると考えられています。
遺伝の関連が強く疑われる、つまり、ご家族の中に喘息の方がいる割合は5割でした。
内訳としては、父親あるいは母親が喘息と回答した方が、それぞれ2割でした。
喘息の発症には、遺伝以外にも以下のような要因が関連しています。
  • アレルギーを起こしやすい物質(ダニ・動物・カビ・ゴキブリなど)が身の回りに多い
  • 環境(大気汚染)
  • タバコ
  • 精神的要因(ストレス・疲労)
なお、若い女性の喘息患者さんは、「自分の喘息が子どもに遺伝するのでは?」と心配される方が比較的多く見えますが、当クリニックでは次のように説明しています。

「体質以外の影響も結構あります。お子さんの体質への影響は、お母さんとお父さんの影響はほとんど一緒ですよ。」

ご家族のどなたが喘息ですか?



Q 治りますか?

A 「治る可能性」はあります

「本日の診察で、心配な点はありますか?」と診察終了時に喘息の患者さんに質問すると
「私の病気はゼンソクなんですね…結構ショック」
「でも、治るんですよね?まさか一生お付き合いじゃないですよね?」

そんな風に返答される患者さんがかなりお見えになります。

最近の調査の結果では、大人になってから発症した喘息患者さんの6人に1人(15%)が5年後に寛解(かんかい:通院や治療の必要性がない状態、ただし、その後の人生で、喘息が再発するかどうかは、はっきり断言はできない)していたことが報告されました。

一方、気道が敏感に反応しやすい体質、鼻茸(はなたけ、鼻の中のポリープ)がある喘息患者さんは、ほとんど寛解しませんでした。

喘息が治らない理由と今後の見通し


喘息が起きる原因は、体質+α(未だ解明されていない要因)と考えられています。また、風邪・インフルエンザ、アレルギー物質の暴露(ホコリ・花粉・動物のフケ)、環境(黄砂・PM2.5、タバコ煙)、気候・天候の変化、運動、過労、ストレスなど、喘息を悪化させる原因が身の回りにはたくさんあります。

このように、簡単には変えられない体質と、避けられない多くの喘息を悪化させる原因が身の周りにあることが、喘息を治すことが難しい原因と考えられています。
一方、喘息と同じアレルギーの病気であるスギ花粉症に対する舌下免疫療法(スギの花粉に対して、過剰に反応しやすい体質を改善させる治療法)では、3割の方が、花粉症に対する薬が無くても症状がほとんど出ない、4割の方が薬を減らせる、つまり、両者を併せた7割以上の方が、舌下免疫療法の効果を実感されており、花粉症を治すことを目標とした治療法として大変注目されています。

また、気管支喘息では、アレルギー反応を起こすIgEという抗体や気道の炎症を起こす好酸球に対する新薬が次々と開発され、これまでコントロールができなかった重い喘息患者さんに見違えるような効果が得られています。

「どうして喘息を根本的に治すことができないのか?」は、日夜精力的に研究され、その解明が確実に進んでいます。


もっと知りたい【ぜんそく(喘息)】について



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